現代俳句協会授賞式2019.11.18
今日の上野・東天紅で行われた現代俳句協会による全国大会は盛りだくさんだった。
まず、協会各賞の授賞式が行われた。
第74回現代俳句協会賞 佐怒賀正美句集『無二』 永瀬十悟句集『三日月湖』
第39回現代俳句評論賞 武良(むら)竜彦「桜の花の美(いつく)しさようなあ―石牟礼道子が問いかけるもの」
第20回現代俳句協会年度作品賞 久根(くね)美和子 「房はづす」30句
それぞれの授賞者の方々のご挨拶を簡単ではあるがご紹介したい。
佐怒賀正美氏。
編集者として仕事をしてきたが、早期退職者として第二の人生をむかえてあらたなる覚悟のもとに上梓した句集であった。今後の抱負としては、これまでの受賞者を見るとみな活躍しておられる。わたしも自分なりの代表句をつくりたいと思う。
永瀬十悟氏。
今回の句集名の「三日月湖」というのは、大きな川の流れのなかに取り残されて湖となった地形のことです。東日本大震災、原発事故から八年、復興が言われましたが、いつのまにかそれが忘れられてしまって被災地の思いはおきざりにされまさに取り残された三日月湖のようです。そこに俳句で橋をかけたい、忘れ去られようとしているものを言葉で現出したいと願いました。
武良竜彦氏。
東日本大震災のことを考えると、わたしの文学の原点である石牟礼文学に連れ戻されます。わたしのライフワークである石牟礼道子論で俳句評論賞をいただけたことはとても励みになります。石牟礼さんの俳句は皆さん耳にしたことがないと思います。石牟礼道子は、無類の猫好きでした。いくつか紹介しますと。〈花びらも蝶も猫の相手して〉〈猫たちと絆浅からず露の夜〉〈ポケットで育ちし神の猫なりき〉〈死にゆくは誰ぞ猫たちが野辺送り〉〈死ぬ猫のかがめば闇の動くなり〉命の存在の総体を最後まで見届けずにはいられない、もの狂いの眼差しが石牟礼道子の本質だと思います。
久根美和子氏。
俳句をはじめて20年になります。今回は第20回の現代俳句協会年度賞をいただき有りがたくおもっております。私が俳句を20年続けられたのは、ご指導してくださる厳しい宮坂静生先生、すこし優しいですが、それとあとは句友の皆さまのおかげであると思っております。わたしの住んでいるところは信州諏訪の富士見町というところです。八ヶ岳山麓の裾野にひろがる小さな町なんですが、かつては縄文文化がさかえたところでありまして、自然環境がとても素晴らしいところです。これからは自分の住んでいる風土を詠んでいきたいと思っております。
宇多喜代子氏。
ただ好きで60何年やってきた俳句のおかげですが、はっきり申し上げて面はゆいです。これも皆さまのおかげであると思っております。たかが、俳句と思っていたが、たかがではない、と思いました。俳句は一人ではできない、が、しかし一人でやるものでもある。そこを大事にしていきたいと思っております。
(ふらんす堂「編集日記」2019/11/16より抜粋/Yamaoka Kimiko)