高田風人子句集『四季の巡りに』
出版のお祝いの会2016.11.4
高田風人子句集『四季の巡りに』 の出版のお祝いの会が、横須賀市産業交流プラザであり私が伺った。
平尾 先生、奥さま本日はおめでとうございます。皆さまを代表していくつか先生に質問をさせていただきます。まず、先生は小さい頃何になりたかったでしょうか。先生 いまにして思いますと、小学校の頃から箱庭を作ったり庭の手入れをしたり、そんなことが好きだったもので、いまにしておもえば俳句にすこし関係があったのかなあと思います。平尾 俳句を始められたきっかけをお教えいただけますか。先生 あの恥ずかしいというか有難いというか、一番につくった句は小学校4年なんです。むかしは師範学校というのがあって、師範学校を卒業した先生がはじめて我々を教えてくれたんです。でその時に俳句を作らされたんです。その最初に出来た句は、たき火しておしりをあぶるおばあさん(拍手と笑い)というのがわたしの初めての句です。その先生に4,5,6年と教わりました。中学にはいってから俳句にだんだん深入りしていきました。学校の帰りに本屋さんに行って、俳句の本を捜したら、『俳句のつくりよう』という虚子の本が一円以下で売ってたんです。その隣に水原秋櫻子のちょっと厚い本があったんです。その頃は何も知らなかったので、一円以下の虚子の『俳句のつくりよう』を買いました。それがいまの花鳥諷詠との出合いとなったのです。平尾 それでは先生ご自身で一番お好きな句はなんですか。先生 好きな句はいろいろとありますが、想い出の句は、犬ふぐりどこにも咲くさみしいからの一句です。あの句ができるまでに一人で10数句作ったんです。ホトトギスにはその中で選んで貰えそうなものを投句し、この一句は俳句らしくないので、朝日新聞の虚子選に投句したんです。そうしたその句を虚子先生はとってくれたんです。忘れられない一句です。平尾 それでは今度は奥さまに質問をしたいと思います。奥さまにお伺いしますが、風人子先生はお家では奥さまにお優しいですか。夫人 優しくありません。(会場爆笑)平尾 それでは風人子先生は奥さまにお優しくしてあげてますか。先生 男の意地として褒めることはあまりないです。平尾 奥さまいかがですか?夫人 今幸せかと言われますと、こんなうるさい人とは知りませんでした。もっと優しい言葉をかけてくれる人かと思っておりました。あまりそれはダメでした。(会場笑い)平尾 それでは先生、ここで奥さまに優しい言葉をかけてみられませんか。先生 じゃ、はじめてかけさせていただきます。長い間ありがとうございました。(会場拍手)もうひとつ、妻よりも先死ぬ願ひ桜餅という句があるのですが、これは40歳代でつくったものです。それでいまはおかげで90歳になりましたけれど、いまでもわたしが先死ななきゃだめだなって思っております。夫人 わたくしより主人の方が丈夫そうなもので、どうなるかと思いますが、ただわたくしがいないと主人が何にも出来ないものですから、なるべく長く90歳になってすこし欲張りですけれどやはり主人を残して死ぬことはできないかな、と考えております。先生 いいお言葉を有難うございました。(会場 拍手と笑)
花も鳥も人も同格と観じて、太陽の恵みに生を営む人達の詠う、潤いのある詩と信じて七十余年。詩の潤いは心のゆとりに通じます。四季の巡りに従って俳句にあそべる幸せから、句集名は「四季の巡りに」としました。
俳句は季題を大切にする小さないとおしい詩である。
みかん黄にふと人生はあたたかし 風人子