今日は、俳人の鈴木明の忌日である。
昨年の今日、亡くなられた。
本日、麻布善福寺で一周忌の法要があり、ホテルニューオータニにて、「鈴木明を偲ぶ会」が行われた。
『鈴木明全句集』は、鈴木明氏のご存命中に間に合わすことができ、手に取っていただけたのだった。
ご挨拶をされる鈴木明夫人の山本敦子氏。
敦子夫人は、明氏の亡くなる前の一週間について語り、明氏は、辞世の句を詠まれて敦子夫人に渡されたという。それがつぎの一句。
天涯の至純至白の滝の壺
この一句は、辞世の句として全句集の謹呈用紙に記されたものである。
出来上がった全句集の見本をお届けした日のことについては、お二人で頁をめくって喜びあわれたという。
最後まで俳句のことを気にしておりました。明さんは立派な堂々とした最期でした。
男で死にたい梅雨の羅漢の頭撫で
という俳句がありますが、本当に男で死んだと思います。
本当にありがとうございました。
とご挨拶をされた敦子夫人であるが、亡くなられてから今日まで、涙の涸れる日がなかったということである。
この「偲ぶ会」には、俳句関係の来賓としては、高橋睦郎、筑紫磐井、高山れおな、の各氏が招かれ、それぞれがご挨拶をされた。
「野の会」「実の会」の人たちがたくさん集い、鈴木明氏を偲んだ。
今日は、鈴木明氏を偲び、全句集より作品を数句記しておきたい。
野菊咲く駅から見える次の駅
ト書きのように女駆け出す小諸の秋
揚雲雀梯子を縦に運ぶ空
沙羅の花前世もたぶんこんな俺
君たちのいじめ知ってるぼくバナナ
掛軸の美しき嘘冴えかえる
めまといやふと二の腕を嗅いでみる
笑う馬の桃色歯茎雪来る頃
たましいを水色にして寝冷えの子
雪虫や昭和といつかはぐれたり
俺おれおれと広がる俺や穴惑い
キャベツ畑徴兵制が粛々くる
死ぬ死ぬと言い死なぬ俺冬青空
亡くなる直前に出来上がり、手にとっていただけた『鈴木明全句集』。
どこからが戦後舌出し蛇いそぐ 鈴木 明
「俳句づくりも、結局はいい読者に恵まれることしかない。句集をひらいて私の俳句に、一人でも多く感応する読み手があれば、本を出した甲斐がある。」(鈴木明・『寫楽』(あとがき)より)